ジョブ型雇用移行の前提
日立のジョブ型雇用移行が5月27日に報道されたことを受けて、複数のクライアントから質問があった。質問は各社共通で「ジョブ型雇用が日本でも主流になっていく可能性があるので、いかに準備すべきか」という内容であった。質問に対する回答内容を改めて記述する。
日本企業は一般的にメンバーシップ型雇用を採用している。メンバーシップ型雇用とは1人1人の業務内容が曖昧で、コミュニーションを取りながら業務を進めるスタイルである。一方、ジョブ型雇用は欧米で主流となっているスタイルで、1人1人の業務内容を職務記述書で明確にすることが特徴である。日立はテレワークを勤務の常態とすることからジョブ型雇用を本格的に導入する。しかし日立の場合、ジョブ型雇用の導入準備を2011年から開始していた点に注意する必要がある。つまり日本人の国民性や文化にとって、ジョブ型雇用は必ずしも馴染みやすいものではないと捉えるべきである。
従ってジョブ型雇用に移行する場合、組織単位の業務内容に注目して必要性や効果を判断することが重要であることを質問者に回答した。
業務は基本的に3つに分類することができる。1つ目はルーチン型業務(定常型業務)、2つ目はプロジェクト型業務(企画型業務)、3つ目がスポット型業務(突発型業務)である。職務記述書で業務内容を明確に決めやすいのはルーチン型業務である。そのためジョブ型雇用に移行しやすいのはルーチン型業務の構成比が高い組織や担当者である。具体的には総務や経理などの管理スタッフ部門がジョブ型雇用に移行しやすい。
またプロジェクト型業務が中心となる部門、つまり企画や開発を担当する組織では、プロジェクト立ち上げ後の計画立案段階で一定の裁量を持たせた職務記述書を作成すべきである。このように組織と業務を特性を踏まえてジョブ型雇用に移行することが必要である。