人事考課におけるコーチアビティ
毎年年末から年初にかけて人事考課に関する質問が増える。質問の趣旨は人事考課の効果を高めることが多い。人事考課は決まった時期に繰り返して行うために年中行事として形骸化してしまうことがありえる。形骸化を避けて、期待される効果を上げるには、人事考課の目的に立ち返り、目的の達成度を検証することが必要である。
人事考課の目的は公正な処遇、人材育成、適材適所の3つである。この中で最も重要な目的は人材育成であるが、賞与金額の決定を含む公正な処遇しか意識していない企業もあり、こうした企業の人事考課は形骸化しやすい。
人事考課を人材育成に結びつけるには、考課を担当する管理職の力量が重要である。管理職の力量を高めるために考課者研修を行うことが考えられる。考課者研修では、考課の妥当性を高めるための人事考課のあり方、考課結果を共有するための面談の方法が中心になる。
人事考課の効果を高めるには、考課者に加えて考課対象者も重要である。最も重要な目的である人材育成の効果は、考課者としての管理職と考課対象者としての部下の相互関係によって決まるためである。そのために考課対象者に対する働きかけも重要である。人材育成の効果を高める上での重要なキーワードにコーチアビティがある。コーチアビティとはコーチを受ける資質、言い換えると人材の成長可能性のことである。
人事考課を人材育成に結びつけるには、管理職向け考課者研修のみならず、部下向け考課対象者研修を行うこと、そして考課対象者研修においてはコーチアビティを高めることができる内容を組み入れることが必要である。