中期経営計画の変更と延期への懸念
2020年に公表された中期経営計画の変更と延期が増加している。日本経済新聞によると中期経営計画の変更と延期は前年比で7割ほど増えている。変更と延期の理由は新型感染症の拡大であり、2008年の金融危機の時以来の多さとなっている。中期経営計画を公表している企業は株式公開企業が多く、6割程度の株式公開企業が中期経営計画を公表している。公表の理由は株価対策であることが多いため、売上高と利益などの経営成果の低迷が見込まれる場合には目標の下方修正や目標達成時期の先延ばしが行われやすい。
しかし、こうした変更や延期は中期経営計画が持つ本来の意義を逸脱している。中期経営計画は通常3年の期間を対象とするが、単年度では実現が難しい「あるべき状態」をつくり上げるために立案すべきである。計画における重要な内容は「あるべき姿」を実現するための方策であり、売上高などの経営成果は「あるべき状態」にどの程度、近づいているかを測るための物差しとして使われるべきである。
中期経営計画、特に経営成果目標の安直な変更や延期は「あるべき状態」を実現するための方策を不十分であることが疑われる。特にリスク基本計画の不備が懸念される。
企業としての「あるべき姿」を具体化し、その実現を目指すためには経営トップ、第一線管理職、管理部門スタッフによる三位一体での協力関係が必要不可欠である。株式公開企業などには、三位一体での協力関係を築くことによって「あるべき姿」の実現を目指した取り組みを期待したい。