プレーイングマネジャーの成功条件
ある中堅企業での課長研修では、プレーイングマネジャーとしての成功条件の基礎をつくることを重視して進めた。課長は多くの企業や自治体でプレーイングマネジャーとして期待されている。そのため管理職の基本的な役割の習得に加えて、プレーイングマネジャーの成功条件を説明した上で演習で取り上げた。
管理職の基本的な役割は業務計画の立案と実行、人材育成、課題解決の3つである。この3つの役割は部長にとっても必要であるが、課長と部長の相違点は課題解決への取り組みで確認できる。課題解決とは、望ましい状態を実現することであり、具体例としては、経営理念の浸透を通じた望ましい組織文化づくり、中期経営計画の達成などがある。こうした課題解決は課長よりも部長の方が期待されるため、課題解決に関する期待度の大きさが課長と部長の相違点である。部長は、部門単位の業務計画を立案する段階に課題解決に必要な方策を組み入れることが必要になる。
一方、プレーイングマネジャーである課長は業務計画を立案の段階でマネジメントとプレイヤーの活動配分を適正化することが必要である。活動配分を適正化するためには、プレーイングマネジャーの成功条件に基づく計画立案が期待される。
成功条件は、わかりやすい方針の提示、適切な役割分担、業務遂行での率先垂範の3つである。専任管理職ほどはメンバーに目が行き届きにくいために方針のわかりやすさ、負荷を適度に軽減するためには役割分担のあり方、メンバーの成長を促すには模範を示すことが重要になる。
研修で理解を促すためには、スポーツ界の成功事例を紹介することが効果的である。スポーツ界のプレーイングマネジャーの成功事例は少なく、代表例は南海ホークスの野村克也監督まで遡らなくてはならない。野村監督の場合は、わかりやすい方針の提示は「考える野球」、適切な役割分担は「大リーグ経験者のヘッドコーチ起用」、業務遂行での率先垂範では「4番打者そして捕手としての活躍」になる。