データサイエンティスト育成の課題
デジタル化が注目されている状況でデータサイエンティストを育成したいというニーズが増加している。データサイエンティスト育成ニーズ増加のきっかけには一般社団法人データサイエンス協会による2021年9月からデータサイエンティスト検定開始がある。この一般社団法人はシンクタンクやIT企業が幹事会員になっておりデータサイエンティストを増やすことを目指している。
データサイエンス協会はデータサイエンティストに必要な3つの能力を定義している。1つ目はビジネス上の課題を解決する能力(ビジネス能力)、2つ目は統計的な知識に基づきデータを取り扱う能力(データサイエンス能力)、3つ目はデータを扱うためにITなどを駆使する能力(データエンジニアリング力)である。
データサイエンティストには幅広い能力を習得することが期待されている。習得すべき能力範囲の広さは、約20年前に経済産業省主導で立ち上げたITコーディネータ制度と共通点がある。ITコーディネータ制度とは一般社団法人ITコーディネータ協会が行う研修によってITコーディネータという資格を付与する制度である。
20年以上経過した現時点でITコーディネータの人数は頭打ちであり、成功事例も増えていない。その主な理由には習得すべき能力範囲の広さがあり、期待されている経営とITを橋渡しできている人材の育成に成功しているとは言い難い。
そのためデータサイエンティスト育成ではITコーディネータ制度を教訓として、デジタル化に貢献するために複数の専門家による協力も含め、必要な人材の条件を明確にしていくべきである。